院長メッセージ

現在、沖縄県立宮古病院は地域がん診療病院として位置付けられています。 宮古島の高齢者の人口割合が年々増加していく中で、高齢者の各種がん患者の増加などもみられ、今後さらにがん患者の発生予防、がん患者の早期診断と治療も地域のニ-ズとして高まっていることが理解できます。当院としてはがん患者に対して高品質の良い医療の提供をしこのニ-ズに応えていかねばなりません。

2016年度は、院内がん登録数は230名となっています。その中でも60歳以上が83.9% を占めております。がん患者の5名のうち4名が高齢者がん患者ということになります。今後も高齢化が進んでいくことが予想されています。

高齢者がん患者の多くはがんという疾患以外にも多臓器にわたる疾患を合併し、また一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦世帯という背景から生じる特有の家族内、地域社会での問題を含んでおり、多くの方面から多職種による協働での対応などが求められてきます。高齢者がん患者に対してはそういった統合的構造的アプロ-チが今後重要となってくることでしょう。

宮古管内では、結腸がん、直腸がん、胃がんなどの消化器がんが多く、その次に乳がん、前立腺がん、胆のう・胆管がん、肺がんと続いています。また各種がん患者がいる中で、血液がん患者の登録も8名ほどいます。地域がん診療病院としてはこのように多くの臓器にわたって、患者数は多くはないが少数名発病してくるがん患者への対応もニ-ズとして高く、特に血液がんや放射線治療を必要とする患者らに対しては今後も専門病院への紹介を含めどのようにチ-ムで取り組んでいくか、喫緊の課題と考えています。

男女での特徴は、前立腺がんは男性に、乳がんや子宮がんなどは女性に、といった生殖器臓器特有の特徴があり、当院ではそれらのがん患者に対する基本的対応をしていますが、基本的に放射線療法などを希望する場合には専門病院への紹介を行っています。

宮古病院での他の特徴として、診断のみの割合が多く、また自施設での治療の割合も多いのが特徴的です。自前で初期から積極的に関わっていることがわかります。特に消化管がんはほぼ当院外科において手術療法と化学療法で対応されておることが如実に示されております。他、肺がん、乳がん、前立腺がんなどの対応も宮古島の施設内で多くは対応されていることが示されています。

がん患者の発見の契機になっているのは、『他の疾患の経過観察中』あるいは『その他』が多く、がん検診や人間ドックからの紹介は割合的に少なくなっています。このことも予防と保健を考える意味で重要なことだと考えます。

他、アルコ-ル飲酒の問題やたばこの問題など、生活習慣を改善することでがん患者の発生を予防していくことが、つまりがんに対する地域ヘルスケアシステムの構築も大きな地域課題として挙げられます。ひとつひとつ地域医療機関と連携しながら地道に取り組んでいきたいものです。

沖縄県立宮古病院
病院長 本永 英治

ページのトップへ