院長メッセージ

豊見城中央病院は南部医療圏に位置する地域医療支援病院であり、2016年の二次医療圏別がん登録割合でも93.5%が南部医療圏の患者様です。

当院のがん登録患者数は2012年より一貫して増加傾向でしたが、2016年は720名と2015年に比し若干の減少を示しています。男性395名、女性325名と男性が多く、年齢分布では60-69歳:188名が最も多くなり、次いで70-79歳:172名、80歳以上:134名となっています。

この60歳以上の年齢層においては登録数が2015 年より減少していますが、60歳未満の年齢層では逆にどの年齢層でも登録数が増えており、今後の経過を注意深く追っていく必要がありそうです。部位別登録数では大腸がんが150件(結腸:108件、直腸:42件)、前立腺がん:70件、肺がん:63件、乳がん:61件、子宮頸がん:53件、胃がん:50件と続きます。食道がん:8件も含めると自覚症状に乏しいと言われる消化管のがんが合計208件であり、早期発見・早期治療のためには上部・下部の内視鏡検査の必要性を改めて感じます。腎・泌尿器系のがんも多く、前述の前立腺がんに加えて、腎・他の尿路のがん:36件、膀胱がん:25件で、合わせて131件に上ります。また肝胆膵では膵がん:23件、肝がん:21件、胆のう・胆管がん:20件となり計64件でした。腎・泌尿器系がんや肝胆膵がんでは、腹部超音波検査による早期発見も可能な疾患であるため、当院ではエコー検査精度の向上・強化を図っています。

女性特有の疾患の登録数では、前述の乳がん・子宮頸がんに加えて子宮体がんも23件であり、3年間の推移をみますと子宮頚がん・子宮体がんが急激に増加しています。婦人科疾患の背景には、受診をためらうことで病状が進行している場合も多く、それが予後を悪化させているのは明らかで何らかの対策が必要と思われます。また、これはがんに限った事ではありませんが、沖縄県全体で住民検診等での異常指摘時にも2次検診を受診しない場合や、受療行動が遅いことが問題となっています。その受領行動の改善を目指し、当院ではまず婦人科疾患自覚症状出現時の早期受診と2次検診の重要性を住民に理解してもらうべく、行政とともに啓蒙活動に取り組み始めました。

当院でのがん発見経緯別登録割合をみますと、自覚症状などを訴えての受診が42.5%、他疾患経過観察中の偶然発見が32.8%、がん検診・健康診断・人間ドックによる発見が21.0%で、来院経路別での割合をみますと他施設からの紹介が63.5%となっています。関連施設である友愛会健康管理センターをさらに充実させて、がんの早期発見への取り組みを強化するとともに、地域のクリニック・診療所から信頼して紹介していただける体制づくりを目指していきます。

これまで社会医療法人友愛会は上記した健康管理センターでのがん早期発見、豊見城中央病院での手術・内視鏡治療・化学療法、豊崎クリニックPET画像センターでの転移検索、南部病院での緩和ケアなど各施設で実績を積み上げており、南部医療圏におけるがん診療の充実を図ってきました。現在、豊見城市与根において建設中の新病院では【がん診療の強化】を目標の一つに挙げ、新しく放射線治療機器を導入し集学的がん診療体制を確立すべく2020年3月に竣工予定です。

また、今後は各病院や施設でのがん診療に留まらず、在宅での看取りへ積極的な取り組みが求められており、地域を上げてのがん診療体制づくりが急務となってきます。これからも友愛会は、南部医療圏に最良の医療を提供することを目標に掲げ、周辺医療機関や周辺施設と協力し相互理解を深め、一貫した継続性のあるがん診療を展開して行けるよう取り組んでいきます。

社会医療法人友愛会 豊見城中央病院
病院長 新崎 修

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