院長メッセージ

日本人の死因の第一位はがんによるものであり、がんは私達にとり身近な病気です。実際に私の祖母は胃がんで、私の母は胆管がんで、私の義兄は膀胱がんで亡くなりました。

私は医学生時代に、柳田国男さんが執筆された「がん回廊の明日」という本に感激し、東京築地にある国立がんセンターにレジデントとして3年間勤務しました。また2018年1月22、23日に琉球大学医学部附属病院がんセンターの強化を目的に、静岡県立がんセンター、愛知県立がんセンター、および国立がん研究センターの3カ所を視察しました。さらに2018年11月19日には母校である岡山大学病院のクリニカルバイオバンクを視察いたしました。   

琉球大学医学部附属病院は沖縄県唯一の特定機能病院として、またがん診療における沖縄県の最後の砦として、全てのがん種の診療を行っています。一昨年から外来化学療法室専従医師、緩和ケア専従医師を雇用するなど、がんセンター機能の強化を図りつつあり、外来化学療法室を4 床増床しました。また昨年10月には、がんゲノム医療連携病院(九州大学病院との連携)の認定を受け、2019 年2 月にがんゲノム相談外来を開設しました。さらに現在、小児がん拠点病院の取得を目指しています。さて当院の2016年院内がん登録の特徴を以下に箇条書きで示します。

  1. 2016年の当院の登録数は、1,570件で前年とほぼ同数でした。当院の登録割合は、沖縄県18施設全登録件数の15%にあたり、その年次推移は横ばい傾向でした。
  2. 年齢階級別登録割合をみると、沖縄県の18施設と比較して、当院は20歳代、30歳代、40歳代で最も高い割合を占めていました。また、小児・AYA世代の登録割合が県立南部医療センター・こども医療センターと並び高いことも特徴です。
  3. 来院経路別登録数をみると、「他院紹介」が87.1%と高く、沖縄県がん診療連携拠点病院として、診療所や他の病院から紹介を受け、がん診療を行っていることがわかります。
  4. 部位別登録数の推移をみると、子宮頸部180件、口腔・咽頭157件、皮膚136件、血液腫瘍132件、肺117件が上位であることが特徴です。
  5. 子宮頸がん、口腔・咽頭がんの集計データをみると、放射線治療設備があり、集学的治療が可能な当院に集約されています。また、皮膚がんにおいても皮膚科専門医によるがん治療が可能な当院に集約されています。
  6. 二次保健医療圏別の集計をみると、本島に所在する施設の中で、一番多く離島市町村在住の患者を診ていることからも、沖縄県がん診療連携拠点病院として、診療所や他の病院と連携し、がん診療を行っていることがわかります。なかでも、宮古島・多良間島からの患者さんが多いのが特徴です。
  7. 小児がんは、県立南部医療センター・こども医療センターと当院に集約されていることがデータからわかります。当院では主に骨・軟部腫瘍と脳・中枢神経系腫瘍を診ています。
  8. AYA世代のがんは、県立中部病院と当院に集約されていることがデータからわかります。当院では、主に子宮頸がんと脳腫瘍、希少がんを診ています。
  9. 部位別の詳細集計データをみると、先に述べたように口腔・咽頭がんはもちろん、骨・軟部腫瘍、皮膚がん、子宮頸がん、子宮体がん、脳・中枢神経系腫瘍、血液腫瘍においては、当院は沖縄県内で一番多く患者さんを診ています。
  10. 当院の5年相対生存率について、2007-2008年は生死不明割合が10%以上となり、生存率の公表に至らないデータが多いものの、2009-2011年は生死不明割合が改善し、多くのデータが公表できるようになりました。

琉球大学医学部・同附属病院は、約6年後に西普天間に移転する予定になっています。琉球大学医学部附属病院のがんセンターの機能を強化することで、沖縄県全体のがん診療の質の向上を図ることを目指したいと考えています。

国立大学法人 琉球大学医学部附属病院
病院長 藤田 次郎

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