院長メッセージ

那覇市立病院は、1980年に開設された、現在一般病床470床の総合病院です。以来、地域の中核的な急性期病院としてその役割を担ってきました。2008年には、地方独立行政法人となり、より効率的で柔軟な組織形態へ変更しました。開設後39年が経過し、病院建て替え構想が承認され、今後基本設計等を進めていく予定です。

がん診療においては、2005年に南部保健医療圏における地域がん診療連携拠点病院の指定を受けました。以降、各科がん専門医師はもとより、がん関連専門・認定専門看護師(がん看護専門看護師、がん化学療法認定、がん放射線療法認定等)の充実を計り、さらにMSW、薬剤師、栄養士等の多職種の協働連携を得ながら、より良質のがん診療を目指しています。

当院の2016年のがん登録数は919件(876件; 2015年)で、少し増加傾向にあります。県全体登録数のうち、8.9%(8.4%;2015年)が当院の登録頻度でした。登録数の推移を部位別に見ると、男性では大腸(結腸、直腸)90件、前立腺55件、胃52件、肺52件、血液腫瘍51件の順で多く、女性では乳房184件、子宮(頸部、体部)58件、大腸(結腸、直腸)52件、血液腫瘍29件、甲状腺24件、肺23件の順であり、男女ともに例年通りの頻度でした。年齢階級別に見ると、70歳台234件、60歳台232件とほぼ同数で、ついで80歳以降で、これも例年通りでした。

二次医療圏別の登録数割合は、86%とほとんどが南部医療圏の登録でした。頻度の多い疾患は、乳房、大腸、血液腫瘍で、これも例年通りでした。血液腫瘍については、宮古医療圏、八重山医療圏からの紹介も散見されました。来院経路から症例区分別にみると、多くのがん、特に乳房を筆頭に大腸、血液腫瘍、肺、前立腺、胃等が他院からの紹介でした。これらの多くが、当院で診断し治療を開始されていますが、乳房に関しては、他施設で診断され初回治療継続中~継続後に紹介される症例が多い傾向にありました。がん検診等で発見され紹介された頻度は18.2%で県内施設平均14.7%に比較すると高頻度であり、当院健診センターからの紹介増加も一因だと思われます。紹介元の医院はほぼ南部保健医療圏にあります。これらの症例を区分別にみると治療も当院で完結しています。大腸、血液腫瘍、肺、胃については、他院診断後に当院での治療のための紹介例が多く、その要因は大腸・胃がんは内視鏡的粘膜下層剥離術等を積極的に施行していること、血液疾患については専門医が複数配置されていることが影響しているかと推測しています。また、乳房に関しては、他院での治療開始後(手術・化学療法)の紹介症例が多くなっています。当院において引き続き放射線治療を施行することが、その要因になっているかと思います。

当院(2009~2011年登録患者)のがん5年生存率は、全がん全体が67.4%であり、(2007~2008年登録患者)の65.2%に比較して改善していました。県内連携拠点病院3病院(2009~2011年登録患者)64.5%、全国がん診療連携拠点病院251施設(2007~2008年登録患者)65.8%との比較においてもわずかながら良好な生存率でした。部位別における5年生存率は、前回(2007~2008年登録患者)に比較して、口腔・咽頭、胃、大腸、膵臓、白血病で上回り、肺、乳房で横ばい、肝臓、胆嚢・胆管、子宮体においては少し下回っていました(別添を参照)。

今後も継続データの蓄積・解析が必要です。他府県との比較をはじめ、施設間の得意・苦手分野等、将来のがん診療体制に影響を及ぼす指針になりますので、今後の展開に期待したいと思います。

当院においても医療提供体制(手術・化学療法・放射線治療・緩和ケア)を充実させて、他の医療機関との連携を推し進め、地域そして沖縄県のがん対策に寄与したいと考えています。

地方独立行政法人 那覇市立病院
病院長 屋良 朝雄

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